悪質ホスト商法の売掛金問題

無知な少女の未来を奪う手口

(敬天新聞 令和5年12月号 2面)



ホストクラブの街に変貌した歌舞伎町の看板群


事件多発で社会問題化

 近頃の新宿区歌舞伎町は街並みが様変わりして、ホストや若者ばかりが行き交うようになった。店の看板もやたらとホストクラブの物が目に付く。昼間からホストの宣伝トラックまで走りまわり、コロナが終息に向かいホストバブルとも言われている。

一方ホストクラブに絡んだ事件のニュースが跡を絶たない。今年の流行語大賞にまでノミネートされた「頂き女子」と称する「りりちゃん」こと渡辺真衣被告は、複数の男性から総額3億円もの金を騙し取って詐欺で逮捕されている。

その被害金の大半は新宿歌舞伎町のホストクラブで遊興費として使ってしまっているという。この事件では、数千円の置物を1千万円で買わせたりして店で貢がせていた担当ホストも共犯で逮捕されている。

また歌舞伎町の路上でホストに刃物で切り付けた女が逮捕され、その女が1800万円を貢いで人生を壊されたと激昂して犯行に及んだことがニュースで報じられた。

いずれの事件も客の女がホストに使った金額が尋常ではないが、女が犯行に及んだ要因は、突き詰めればホストクラブの高額請求にもあるようだ。勿論、女が犯した罪の重さは免れぬ。

しかし、国会で立憲民主党の塩村文夏参議院議員が問題提起したホストクラブの問題は、その尋常ではない金額を、支払い能力のない学生や無知な少女に、ホストが立て替える後払い制度「売掛」という高額請求にあるから深刻だ。

現金での支払い能力が無いと分かっていても、若い女性は風俗店で働くか売春をさせれば、直ぐに稼せげるということが前提にあるから「売掛」で店に通わせて、徐々に値を上げ高額請求するのである。

「売掛」は回収出来なければ、その客を担当したホストが自己負担で店に支払わなければならないというから、ホストも必死で取り立てるわけだ。

直近では、客の女性の職場に取り立てに行ったり暴行したホストが逮捕された。また女子高生に高額な「売掛」を請求し、「パパ活」をさせたり、売春をさせるために大久保公園付近で「立ちんぼ」をさせるケースも多々あり、歌舞伎町のホストが何人も逮捕されている。

また大久保公園周辺で、警視庁が客待ちの摘発を強化しており、摘発した女性の多くは、ホストクラブやメンズ地下アイドルが働く店「コンカフェ」などに通うためだったことが分かっている。そして類似した問題が全国に拡がっているのである。返済のため売春目的で海外に売られる女性もいるというから重大だ。

こういう時の野党議員は力強いものがある。塩村議員は国会での質疑に加え、歌舞伎町を中心に若者の支援活動をしている「日本駆け込み寺」創設者で、現在はホスト被害の救済支援活動を行っている「青少年を守る父母の連絡協議会」(青母連)代表の玄秀盛氏と共に、テレビの報道番組で情報発信したり、メディア各紙の取材に応じて、取締りの強化を訴えている。

また立憲民主党として松村祥史国家公安委員長や関係省庁の大臣に対して「悪質ホストクラブの被害防止対策の徹底・強化を求める要請」を出し、政府に対して警察による指導や取締りの強化などを積極的に要請している。

その一連の動きと世論に応えるように、警察庁の露木康浩長官が「悪質なホストクラブの取締りを強化したい」と発言している。また東京都新宿区の吉住健一区長も「ホスト業界に売り掛けの自粛を要請する」と発言し動き出した。

後に国会で岸田総理も対策強化に言及。議員は党派を超えて取締り強化と法整備に立ちあがってほしい。



「立ちんぼ」で知られる大久保公園


悪質商法と類似点

 嘗ては、ホストクラブと言えば、出入する客層はソープランドで働く女性をはじめとした、水商売関係者が遊びに行くか、金持ちのおばちゃんが優越感に浸りに行くところで、一般の女性が行くところではないと思われていた。

ところが最近のホストは、動画配信サイトやSNSで流行りの旧ジャニーズや韓流アイドルのような情報発信(自己アピール)をしている。

またカリスマホストなどと言ってテレビでタレントのように持て囃したりする番組やドラマもあるから、尚更「会いに行けるアイドル」的な存在のように成って、お店に足を運ぶハードルを下げてしまっているようだ。

またスマートホンの普及によってマッチングアプリといった友達探しや恋人探しで、今や当たり前のように若者に使用されているアプリの中に、ホストが一般人を装って登録しており、何度か会って恋愛感情を抱かせて、後からホストであることを打ち明けて店に誘い込むケースも珍しくないのである。

恋愛感情を抱いてしまった少女たちは、親が何を言っても聞かず、気付いた時には、多額の借金を背負い、風俗店や売春をして金をつくりホストに吸い上げられているのである。

嘗て弊紙で糾弾した恋愛感情を抱かせて宝石やマンション購入を分割なら大丈夫などと言って契約させる「デート商法」や、悩みや不安に付け込んで開運グッズを高額で売りつける「霊感商法」のマインドコントロールなど、悪質商法との類似点も多分にあるのだ。 ホストクラブに行くような少女は、家庭環境が悪いとか、親のしつけが悪いという意見もあるが、若者をターゲットにした今流行りの投資詐欺や情報商材詐欺と、入り口は一緒であるということも、理解していただきたい。

その入り口は家の扉の外にあるのではなく、手元のスマホの画面にあり、家族はおろか本人も気付かないうちに、引きずり込まれてしまうこともあるのだ。便利になった世の中ゆえに、様々なリスクが伴う環境の中で、今の若者や子供たちは生きているのである。

日本の未来を担う若者が、詐欺や悪質商法で、これからという大事な時に、残りの長い人生を台無しにするようなことはあってはならない。

また昨年4月に施行した成人年齢を引き下げた時期も悪かった。今の若者はコロナ禍で育ち、学校生活でも友達と向かい合って給食を食べてはいけないとか、部活動やサークル活動をしてはいけないとか、修学旅行も文化祭も運動会も中止で、時にはオンライン授業で人との交流を制限されて育った世代である。

大人にとっての3年間と成長期にある子供の3年間は、時間の経過が及ぼす影響の密度が全く違うのである。社会における経験や判断力が乏しいのは当たり前ではないか。

そこに付け込んで18、19歳の若者をターゲットに騙す詐欺やホストの被害が生じているのも事実である。

この問題に積極的に取り組んでいる「青母連」は、「売掛」を禁止する条例をつくるよう新宿区に求めるべく署名活動をしており、ホームページからネットによる署名も呼びかけている。

弊紙読者の皆様にも、自分にできる世直しの一つとして、是非お力添え頂くことを願います。


ホストの顔がプリントされた高額ボトルや名刺はアイドル風



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