詐欺犯罪の加害と被害 若者に蔓延する拝金主義

(敬天新聞令和5年6月号 1面)




若者を狙う詐欺

令和3年11月、暗号資産(仮想通貨)の取引に投資すれば高配当が得られると説明し、無登録で出資を募ったとして、警視庁は男女7人を金融商品取引法違反(無登録営業)容疑で逮捕した。

「ジュビリーエース」「ジェンコ」などの金融商品を謳い、全国でセミナーを開いて集客し、650億円相当の暗号資産を集めたという事件である。

紹介した人がサイト登録したり収益を上げたりすると、勧誘者が配当を得られる「マルチ商法」の手口で被害を拡大させた。

この事件を巡り、被害を苦に自殺した女性(当時22歳)の母親が勧誘者を相手取り、慰謝料や投資費用1265万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴したという会見の様子が昨年11月ニュースで報じられた。

自殺した被害女性は大学時代の同級生からの、インスタグラムの「投資に興味ある人」という書き込みをきっかけに、この投資話を紹介された。その末、半ば強引な勧誘を受けて、消費者金融3社から嘘の借り入れ理由まで指南されて、150万円を借りて出資してしまった。

ところが出資後、配当が得られず返金を求めたが拒否されて、被害女性は大阪市内のホテルで「迷惑をかけた」などと記した遺書を残し、自ら命を絶ったのである。

記者会見に臨んだ母親は「娘が亡くなった辛さが消えることはなく、許さないという気持ちしかない」とした上で「相手側には重大な過失、被害にどう向き合うか考えてほしい」と語っていた。また「同じような被害者が出ないように少しでも出来ることがあれば」と勇気をふり絞って訴訟に踏み切った心情を語った。

この事件で逮捕された中心的な人物は、執行猶予付きの有罪判決が確定し、既に釈放されている。直接的な勧誘者ついても略式起訴され、罰金刑が科された。虚偽の投資話で650億円も集め、被害者が自殺までしているのに、日本の法律はどこまで詐欺師に肝要なのか? 騙された人も悪いと言って、自己責任だと断じ、放置していい問題なのか?


急げ厳罰化

 昨今、少子高齢化に伴う将来への不安などを背景に、若者の間で投資への関心が高まっている。政府もNISAなどの投資による資産形成を促し、後押ししているからだ。

一方、20代前後の若者をターゲットにした悪質な投資や詐欺被害が増加している。全国の消費生活センターへの相談も増加傾向にあり、知識の乏しさにつけ込まれ、多額の借金に手を出し、実態に疑いのある投資に誘い込まれているトラブルの事例や悪質業者名をホームぺージで公開し注意を呼びかけている。

高齢者を狙う詐欺も許せぬが、お金の無い若者の知識が乏しい事につけ込んで、絶対儲かると信じ込ませて借金を負わせて搾取していく詐欺は、日本の将来の担い手の芽を摘む国賊行為である。

少子化の加速は、日本の経済や社会保障、国防に至るまで国力に直結する問題だ。そんな問題を抱える中で、この国の担い手となる青少年の育成と言ったものが、未だかつてない危機に瀕している。

連日のように起きている特殊詐欺、そして闇バイト強盗事件で逮捕される若者があとを絶たない。銀座のど真ん中で、白昼堂々と行われた事件は記憶に新しい。こんな事件を、高校生を含む少年達が犯している。この根底にあるのは何か?

戦後78年かけて大人たちが築き上げてきたこの社会に、この様な詐欺や強盗犯罪に手を染める少年たちが現れた。その要因は何か、真剣に考えなければならない時である。

そして若者が詐欺や強盗を犯すというニュースばかりが目につくが、その一方で、投資詐欺や情報商材詐欺と言ったものに騙されて、被害者となる若者も多いのである。

その加害者と被害者の共通点は「お金のため」である。お金が欲しいから犯罪を犯す者もいれば、お金のために詐欺に騙される者もいるということだ。

現代の若者が、金さえあれば何でも出来る、買える、幸せになれると信じ、とにかく「金が欲しい」という同じ理由で加害者にも被害者にも成っているということである。

やはり戦後の教育によって大切なものが抜け落ちていると思えてらない。特に道徳や倫理観の欠如は著しい。嘗ての日本は、自分や家族が健康で元気であれば多少貧しくとも幸せだったし、他人を傷つけてまで金を得ようとはしなかった筈だ。

このまま教育が儘ならぬ状況で、成人年齢を引き下げて「自己責任」と切り捨てるだけの社会でいいのか? これから日本は、さらに少子化が進み、経済的に厳しい社会が到来し、益々格差も広がることだろう。

その厳しい日本を支える、担い手となる若者が、社会人に成る出鼻の二十歳前後で犯罪の加害者に成ったり、騙されて被害者に成って、人生を挫折してしまうような世の中ではあってはならない。

成人に成る前に、現実味のある教育をしっかりと行わなければならない。そして社会に出たら、自らの行動に大人としての責任が伴うことをしっかりと教え込まなければならない。

世の中の誰もが清く正しくいてくれればいいが、そんな性善説は実社会では通用しない御時世だ。

だからと言って、「木の葉が沈んで石が浮く」ような不条理が罷り通る世の中であってはならない。弊紙は詐欺犯罪に対する厳罰化を一刻も早く実現するよう世論喚起していく所存である。


国民生活センターでは若者の被害増加を重く見て注意を呼びかけている


補足:18歳・19歳の消費者トラブルの状況−成年年齢引下げから1年/国民生活センター令和5年5月31日公表(クリック)



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